キーボードを含む編成の4ピース・バンドTrupa Trupaを聴いて、彼らの母国ポーランドの長きに渡る苦難の歴史を想起した。ホロコーストを例に挙げるまでもなく戦争と国家存亡の危機の繰り返し。淡々と耐え忍ぶようなヴァースから一転エモーショナルなコーラス、時折聴かせる劇的な展開といった曲調にそれは反映されているのかもしれない。一聴、それはニルヴァーナを始めとするグランジ・ロックからの影響のようにも聞こえる。
ニルヴァーナは実はピクシーズよりエコー&ザ・バニーメンの影響が色濃いと著書で論じたのは久保憲司だが、大局的な視野に立てばニルヴァーナもTrupa Trupaもエコー&ザ・バニーメンやジョイ・ディヴィジョンといった80年代ポスト・パンク・シーンの末裔なのかもしれない。また、ジョイ・ディヴィジョンの前身バンド名はポーランドの首都ワルシャワからで、ジョイ・ディヴィジョン自体はナチス強制収容所に設置された慰安所から名付けられたが、Trupa Trupaは、彼らを含め様々なサイケ、ポスト・パンク・バンドから影響を受けてきたという。
さらに私は彼らの曲「THE SKY IS FALLING」から、90年代の国民的アイドル・バンドWANDSが、その後グループを脱退する上杉昇のペンでリリースしたグランジ・ソング「Same Side」を強烈に思い出した。上杉ソロのステージを観たことがあるが彼は鳥のように自由だった。一方、Trupa TrupaのGrzegorz Kwiatkowski(G, Vo)は、繊細でドラマチックなハード・ロック・ナンバー「WASTELAND」で我々は世間の除け者だと歌い、“自分自身の内に潜む邪悪こそバンドが表現したいテーマだ”と語る。イアンやカートがそうだったように、彼らも上杉も自分自身を偽ることを激しく拒否する。
「本当の戦争とは我々一人一人の想像力の中でこそ行われているのかもしれない」。この作品を聴いて私はそう感じる。Trupa Trupaの音楽は、過去から現在、世界各地のインディー・ロックと共振する。ポーランドの、そして世界各地の歴史を呑み込んでいく。